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第32回 また会えた。
昨日は「筋のばし」の練習で、
スタジオ内ではあちこちで筋を伸ばす姿が見うけられた。
春である。
シェリル・クロウはかっこいいのであるが、
私の方はといえば伸ばす前に、手も足も出ないという感じで
そんな私に筋を伸ばして見せる平田さんは、希望の星である。
帰りの車の中では昔のクイズ番組の話題で
後ろの3人が限りなく盛りあがっていた。
その面白さはちょっとラジオで流したい位であった。
ひとりになってもしばらく笑いが止まらなかったが、
また何かが始まり、いいものが生まれる予感の夜だった。
さあ、春だよ。
第33回 たまごいろ
玉子丼を食べてたら涙が出た。
特別おいしい玉子丼ではなかった。
ただ、食べたらおなかがあったまって、
そしたら体があったまって、
玉子丼は何も考えてないのに、と思ったら
涙が止まらなくなった。
優しさってこういうことだのに、
なんで私は忘れてしまうのだろう。
子供の頃、私は目標はあったが、それは夢とは少し違った。
だけど今は夢がある、私はこの玉子丼のような人になりたい。
だってそれは私の好きなたまご色で、
とってもしあわせそうだったから。
第34回 みんなが教えてくれたこと
最近みんなに教わったこと。
元気と強気は違いますよ、ということ。
今日思い出したこと。
私の夢は、
「世界のはしっこでしゃがみこんでいる人に
自動的に聴こえてしまう音楽」をつくること。
今日いきなり蘇った記憶。
空が夢だとしたら、地面が現実で、
ということは・・私こそが希望!
と分かってしまった日。
街頭テレビではオリンピックで
日本のスケート選手が金メダルを取っていた。
今思うこと。
すべての歌える場所が
私の、夢の場所なのだということ。
音楽はすばらしい。
みんなに教わったこと。
みんなが教えてくれたこと。
第35回 そら
少なくとも、私が正しいとは信じないでおこう。
いろんな形の魚がいたように、
いろんな種類の植物があるように、
いろんな生き物がいていいのだ。
私もその内の一匹でいいのだ。
正しいとか間違いとかじゃなく
美しくありたい。
まるでキャタピラ・ダーリンの名曲の題名のようだが、
美しく。
美しいには厳しさが含まれているからいいのだな。
悩みが嵩じて風邪をひくというのも
人間らしくてそれもまた良し。
いろんな生き物がいていいのだ。
排除するなかれ。
排除するなかれ。
排除しないと自信が持てない私は
どんどん捨てて
捨てて捨てて
残ったちびっこい私だけでよい。
ちびっこくなった分、世界が広く見えて
さぞ楽しかろうよ。
その時近くにいた人と手をつないで
空を見上げることができたなら。
空を見上げることができたなら。
第36回 そのままで。
しのきちとあんちゃんと花見に行った。
清水寺だった。
三年坂を、カメラを持って楽しそうに
私とあんちゃんの5歩位先を
ぴょんぴょん飛びながら歩いて行くしのきちは
かなり可愛かった。
行きの車の中で、あんちゃんが言った、
「明日の仕事の段取りしなあかんなあ」
の段取りという言葉を、私が
「ゆっくり?」
と聞き間違えた。
それをあんちゃんに訂正されたところで、しのきちが
「びっくり?」
と後部座席から顔を乗り出してきて
にこにこ顔で聞き間違えた。
「どんだけ変換すんねん!」と私。
「三人しかおらんのに・・」とあんちゃん。
それでもしのきちは、
「ぎっくりかな〜と思ったけどそれもへんかなあと思って」
とかなんとか、にこにこしていた。
8度以上熱があっても、仕事を休むという
選択肢が無いあんちゃんもスゴイが、
日頃ボケ役しかできない私を
ツッコミにまわしてくれるしのきちもスゴイと思う。
しのきちにはずっとそうやって、
にこにこ聞き間違っててほしいような、
そうやって四次元の世界から
にこにこ飛び出して来てほしいような気がした。
ほんとうに、そのままでね。
第37回 映画
10年ぶりに映画を観た。
『黒い瞳』という映画だった。
10年前は大毎地下劇場で『ひまわり』と2本立てだったな。
お昼代を節約して夕暮れ時、いつも堂島川に沿って
振り返りながら帰った。
空の色がどんどん変わっていくのを
確かめながら帰った。
いい映画だった。
感情移入する人物が増えていた。
観れてよかった。
また10年後に観ようと思う。
第38回 たとえば。
早起き
オレンジ
窓
月明かり
潮岬
灯台
生成り
しっとり
しなやか
夏の午後
食卓
ゴンチチ
ともだち
木陰
夕闇
円形劇場
旅立ち
夜明け
朝露
春の散歩
寄り道
サンドウィッチ
読みかけの本
etc・・・
第39回 この世界で。
小学生の頃、わたしの学校では集団登校だった。
近所の小学生が何人か集まって
学年順にニ列に並んで登校していた。
わたしは六年生で副班長で
いつも気楽にひとりで、一番後ろを歩いていた。
ある夏の日、なぜだか忘れたけど
一年生と並んで一番前を歩くことになった。
黒目勝ちなかわいい女の子だった。
わたしは子供が苦手で
面倒を見るお姉さんぽくふるまうのが苦手だった。
一年生の女の子を相手に
共通の話題がない〜と困るような六年生だった。
歩きながらわたしはずいぶん考えて
「高校野球みてる?」
と聞いてみた。
するとその子は
「うん、わたしはみてへんけど・・
お兄ちゃんがみてる。」
と、なんか一生懸命な感じで
わたしを見上げて言った。
でも、もともとわたしが高校野球に興味あるわけでもなし、
せっかく答えてくれたのに
それで話しは終わってしまった。
それでまた困っていたら
どちらからともなく、足に当たった小石を
ふたりで蹴りながら歩いていくことになった。
小石が溝とかに落ちてしまったら
「ああ」、とふたりで残念そうに笑って、
また別の小石を見つけて
学校までずっとひとつの小石を大切に運ぶように歩いた。
その子と一緒に歩いたのは、その一度きりだった。
それからだいぶ経って、わたしは中学生だった。
ある日、母親に
「○○ちゃんに優しくしてあげたんだって?
お母さんにお礼言われたよ」
と言われてびっくりした。
それはあの時の女の子だった。
「え〜、高校野球見てる?って聞いただけだよ〜?」
と聞いても、その子は
いなみさんのお姉ちゃん、と言っていたらしかった。
わたしはその子にやさしくできたとは思わなかったけど
やさしい気持ちはあった。
そんなふうに伝わるんだ、と
中学生のわたしは思った。
これは、初めてこの世界が好きだと感じた日のおはなし。