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第40回   呼んでいる。



今日は一日、ギターの音色を聴いていた。
ずっと部屋にいたから気づかなかったが
夜になって外へ出ると、雨が降っていた。

あんまりきれいなギターだったから
雨も降りだしたんだろう。


部屋の中は蒸し暑かったが
外は意外と涼しかった。
そうか、締め切っていたからな・・。


今日は少し窓を開けて寝ようかな。
そうすれば、遠いあの人の声も
風に乗って聴こえるかもしれない。


おやすみなさい。













第41回   今日もどこかで。

花束は、もらうよりあげる方がだんぜん好きだ。
花束を贈る機会はそうそうないから
友達の家に行く時など、張り切って
その人の雰囲気に合わせて作ってもらう。
花束を上手に作る人の手つきは鮮やかで、
煮物料理でなく、サラダをささっと美味しく作ってしまうような感じで
花もガラスのケースに入ってる時より
段違いに生き生きしてしまうのがいいんだなあ。


花束を花瓶に移す時は、多少分けて入れた方がいいことがある。
バラとかすみ草をわけて入れたらバラが生き生きしたことがあった。
かすみ草はバラにとって、カラオケのエコーみたいだったのだ。
そして、一本ずつ元気が無くなっていって
最後まで元気だったバラを一輪ざしに挿したら
これまたたくさんあった時には無い、潔さがあってよかった。
いい歌を、ひとりアカペラで歌ってるような
はっとする美しさだった。


仕事場の近くの花屋は、お供え用のお花に混じって
バラやガーべラを時々安く売ってるから
仕事場用に買う。
飾ってて元気がなくなってきたらできるものはドライフラワーにする。
これは私がまめなのではなく、
私の仕事場はすぐにドライフラワーになる位、乾燥してるからだ。
今日たまたま仕事場に来た年配の優しい女性が
飾ってたバラを、きれいねと言ってほめてくれた。
ドライフラワーにしてもきれいねと。
私は吊り下げたままのドライフラワーがあったのを思い出し、
ちょっとラッピングしてあげたらとても喜んでくれた。
年上の素敵な方が子供のように喜んでくれたら
照れてしまって何も言えないが、私の方が嬉しい。
その人が帰られても胸のどこかが
弾んだボールのように嬉しいのだ。


しばらくしてその女性は戻ってきて
美味しい回転焼きを十個、職場のみんなにくれた。
それをみんなで美味しくいただいて、
今日いちばんの栄養になったってわけ。


明日も元気に、咲かそうね。











第42回   ぢゃか

「なにわんちゅう」のライブを観に行ったら
メンバーの内二名が、今大阪にいないとかで
ドラムをぢゃかが叩いていた。
ぢゃかのドラムをライブで観るのは
初めて会った時以来初めてだった。


ぢゃかは私が初めてバンドというものを始めた時の
ドラマーだった。
私は自分の歌を人々に聴いてもらうためには
バンドでなくちゃと思っていて、
三木楽器のメンバー募集の張り紙をコワゴワ見ていた。
どういう基準で選べばよいか分からなかったが、
ぢゃかの「ぼくドラマーです」という張り紙は
普通に読めた。
字と文章に好感が持てたのでこの人に電話しようと思った。
思えばこの頃、私は「私は歌手でピアニストです」と言いたかったのだ。
それだけが望みだった。


そうしてぢゃかと、ぢゃかの紹介のベースのヤマくんとで
クオレを始めたのだった。
私はずっとクラシックをやってたから
課題を与えられて練習、レッスンの繰り返しだった。
しかし先生のいない練習、というと
どうしたらいいのか分からなかった。
ぢゃかもヤマくんも楽器を持つと透明になれる人で
私はそこらへんをとても信用していた。
センスや好みではなく。
ぢゃかが練習していると、練習というものが
とてもいいものの様に思えた。
そういう香りがした。
今も練習で行き詰まると知らない内に思い出している。
ぢゃかは爽やかに頑張れる人だった。
そういう人のことは忘れないものだ。


ぢゃかと一緒に演奏しなくなって大分経ってから
今日、客席で観ることになった。
ぢゃかのドラムは、
たとえば大人数で喋っていて、その中で
みんなが「そうだな!」と楽しく頷くこと、を言う人みたいだった。
そうしてまた話題が広がって、またぢゃかが「うん!」と頷くことを言って・・
と終わることを知らない音楽みたいだった。
ぢゃかはサービス精神を出し惜しみせず
清水くんと太一くんはほんとうに楽しそうだった。
そして私もほんとうに楽しかった。


音楽ってすごいんだなと思った。
ぢゃかは真摯に音楽をしていた。
それは純粋に楽しかった。
そういうことが、
ぢゃかと一緒に演奏しなくなっても私を支えていたのだ。
私が見えてなかっただけで。


明日のライブは頑張ろうと思う。
フィオリーナ、と私を名づけたのもぢゃかだった。














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Akiary v.0.51