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第64回 いえ、ほんの自慢ですの。
人を待ってる間、時間があったので服屋を覗いてたら
明るい色のマフラーがあった。
この色がこのグレーに合うのかあ。
しかも巻いて見たら意外と顔映りがいい。
と、思ったら可愛い帽子も見つけた。
かぶったらもっと可愛い。
うーん。
しかしイナミ、今はこういうことにお金を使ってる場合ではないのだよ。
という声が聞えた為、
「もうほんとに困っちゃうわ〜、
モトがいいからどんな服も良く見えちゃうのよね〜。
まあ今日はこれくらいにしといてあげるわ!」
と、誰に言ってるのか分からない
いつもの台詞を胸の中でつぶやいて、
その場を去ったのだった。
しかし、強がりつつも未練があったのか
その場に来た友達は、「こんな可愛い帽子が似合う私(買わないけど)。」
と自慢するイナミに付き合わされたのであった。
第65回 心栄え
昨日はめずらしいものを見た。
友達が、目の前でお茶を飲んでいて、
手に持っていたお茶をじょばじょば〜っとこぼしてしまったのだ。
彼女が飲んでいたのはチャイ。
褐色の液体。
こぼしたのは全部自分の方、私には全くかからなかった。
最悪な気分のはずなのに
「すいません、すいません、あちち、うかつだ」
と大騒ぎもせずにその辺のナプキンでテーブルや服を拭き始めた。
私だったら「もー最悪!」と大騒ぎして、
このカップの底が小さいからいけないとか
必死で当たりちらすと思うの。
全部自分の方にこぼしてしまうのも、
チャイと似た色合いの服を着ていたから
こぼしたのに傍目には全然分からなくなってるところも、
なんか飛んだハプニングをしっかり一人で引き受けてるようで
彼女らしいなあと思ったのだ。
お店の人は替わりのお茶を持って来てくれたけど
心栄えのいい彼女には当たり前だと思うのだ。
私だったらこんなふうにできるだろうか?
と、自分を振り返ってしまった。
今度、コーラスで参加する歌の練習をしていて
はっとした。
それは素敵なタテヤマユキさん作の歌で、歌詞で
「70才の先輩」って言葉が出てくるんだけど
私には絶対この言葉は出てこないと思ったの。
70才のおじいちゃん、となってしまう。
でも70才は老人ではなくて、我々の先輩なんだよなあ。
とてもはっとしたのだ。
仕事でもいろんな先輩と話すこと多いけど
ただの老人だと思ってたことがなんと多かったことか〜。
心栄えだな。心栄えが良いとこんな言葉がするりと生まれるのだ。
「北風と太陽」の太陽のように、
私の心を素直な方向に向かわせてくれる
このお二人のお友達と
今度ライブで共演できるのだ。
それをしあわせと言わずして何と言おう。
みなと分かち合わなくて何としよう。
日々を丁寧に重ねてその日を待つとしよう、と思う。
今日もほんとに良い夜だ。