作文

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第96回   ケーキ屋さんで。

私は、歩いてて気になるお店が目に入ると
ショーウィンドウからじーっと覗きこんでしまうのですが、
今日、自転車を止めて
気になったケーキ屋さんを覗きこんでたら
中からまんまる顔のおばあさんが
満月のようなにっこり顔でこちらを見てて
その顔がどんどん近づいてきて
うんうん頷きながらドアをあけて
「どうぞどうぞ」と言うので
うっかり中に入ってしまいました。
すると、なんだか様子の良さそうなケーキやゼリーが並んでいて
中からコック帽をかぶったお兄さんも出てきて
(おばあさんの息子さんかな?と思ったけれど)
「ハイ、ご用意しますよ」と言われたので
何の意味もなく、果物の乗ったゼリーを3つ買ってしまいました。
そしてお姉さんが箱に詰めてるあいだ、
おばあさんが
「うちの自慢はバースデーケーキ。
うちはその日にひとつひとつ作るから。
その日にたまごを割るからね。
だから生地がふわふわ。
他のとぜんぜん違うから
みんなわざわざ注文してくれるんよ。」
と、ショーウィンドウに並んでる
バースデーケーキを指しながら誇らしげに言うので
ふと、父の誕生日が近いのを思い出し
予約してしまいました。
チョコレートのバースデーケーキを。
おばあさんはまたまた誇らしげに
クッキーに書く文字や、ケーキの上に載せる果物など、
元気なしっかりとした字で書いて
控えを私にくれました。
このおばあさんの話を聞いて
何も買わないでおれる人は
果たしているのだろうか?
ほんとに誇らしげに
おいしいケーキだよ、さあいらっしゃい、
と福福しい笑顔で言うんだもんなあ。


うっかり買ってしまったゼリーは
明日家に来てくれる友人といただくことにします。
満月のようなおばあさんのエピソード付きでね。













第97回   永遠のハバナ

「永遠のハバナ」という映画を観てきました。
素晴らしい映画でした、
この映画を日本で公開するために
「あと先考えずに、有り金はたいて、権利を買ってしまった」
Action Incの比嘉さんありがとう!
まだ十三の第七芸術劇場で公開中なので
時間を見つけれる方は観にいったら良いと思う。
こんな地味な映画なのに、
映画には最大の娯楽を求めているキューバの人々なのに、
本国で公開されると口コミで広まり連日満員、
エンドロールが流れるときには
毎回スタンディング・オベーションが起こったんだって。
人生って素晴らしい。
今あなたが絶望のどん底でも、希望に満ち溢れてても
お薦めの映画です。
















第98回   番外編

こちらは作文のコーナーなんですが
お客様のりゅーさんが伝言リレー(?)みたいな
メールを下さいまして、
面白いからこちらにも載せます。
以下の質問に答えて、ミュージシャン5人に
回せばよいらしいです。

Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
★コンピュータ・・わかりません。多分なし。

Song playing right now (今聞いている曲)
★ポール・ウィンター 「Appalachian Morning」

The last CD I bought (最後に買ったCD)
★「永遠のハバナ」サントラ版

Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me (よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)
★ポール・ウィンター 「TRIUMPH」
 バーブラ・ストライサンド 「I KNOW HIM SO WELL」
 ボブ・テルソン(sung by k.d.lang) 「BAREFOOT」
 ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジ 「The Way It Is」
 葛生千夏 「EULALIE−A SONG」

どなたにバトンを渡そうかな?
しのきちには渡そう。
私はネット上で遊ばないのでよく分かりませんが
質問に答えてるのは面白かったです。
りゅーさんありがとう。


 
 
Five people to whom I'm passing the baton (バトンを渡す5人)

第99回   ありがとう

入院していた大家さんが亡くなった。
正確に言うと、亡くなっていたのを
今日知った。
長く入院していて
最近では親戚の方がよく来られていた。
が、親戚の方と顔を合わすタイミングも
なかなかなくて
今日やっと二ヶ月分、家賃を持っていったのだった。
そして教えてもらったのだった。

おじいさんは、いい人だった。
私は初めて一人暮しをしようとしていて
住みたいと思える部屋がない頃、
たまたま通りかかった建物の張り紙を見て
おじいさんに部屋を見せてもらうことになった。
部屋は窓が多く、その窓は大きかった。
よって、部屋はとにかく明るかった。
おじいさんは、日当たりが良く、洗濯物もすぐ乾く!と言って
「とにかく、あかい!」と言った。
明るい、を「あかい」と発音するのだった。
その時、おじいさんを信用したような気がする。

引っ越した時、友人が遊びに来てくれて
引っ越し祝いをしてくれた。
次の日、おじいさんは楽しそうに
「昨日は、弾みましたか」
と言ったのだった。

家具もほとんど無かった初めの頃、
私は部屋の窓にすだれをかけて
友人がくれた年賀状などををたくさん飾っていた。
その様子を見たおじいさんは、目を細めて
「ファンタジーですな」
と言ったのだ。

よく差し入れをしてもらった。
夏には西瓜をよくくれた。
西瓜が好きだといつか言ったのを覚えててくれたのだ。
大体おじいさんのくれる西瓜は熟れすぎていて
どうしてだろう、といつも文句を言いながら食べていた。

勤め先を見にきてくれたこともあった。
遠目に、大家さんだ!とわかったが
ほんとの私のおじいさんみたいな目をしていた。

病気をして入退院を繰り返してた時
家の前を大通りまで歩く練習をしている姿を
見たことがあった。
苦しそうな表情だった。
太陽が照り付ける砂漠を必死で歩く人のように
その姿を見たのだ。

お見舞いにいかないと、後悔するぞと思ったが
行けなかった。
親戚の人が「今は・・」と言葉を濁していたからだけじゃない、
なんとなく、何もなかったように
また「年やから、あきません」と言いながら
戻ってきてほしいと夢のようなことを思っていたのだった。

おじいさんは、あんたは詩を書く人やから、と
ノートをくれた。
原稿用紙や、花の載ってる雑誌。
小さいミシン。

病気になってからは表情も固かったが
いつか、連休前に
「お休みは、どこかへ行きますんかいな」
と楽しそうに尋ねたことがあった。
「いえ、連休も仕事なので」と答えると
「いや、井波さん中国へ行きなさるんかな、と思いましてな。
お友達が、いてはりますやろ」
と言った。
郵便物を不在時にいつも預かってもらってたから、
そしてその友人はおじいさんに一度会っていたから
おじいさんは彼女の名前もきちんと覚えていた。
「そうですね・・行きたいですね・・」と、
はっとしていた。
仕事と、自分のことばかりにかまけて
忘れてました、大事な友人のこと。

おじいさんの笑顔はそれが最後だったかもしれない、
それからは、一度お惣菜を持っていっても
恐縮したような固い表情だったのだ。

一人暮しと言えども
おじいさんと同じ屋根の下、
娘のように気にかけてくれて
ひとつも寂しくなかったよ。
おじいさん、ありがとう。






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Akiary v.0.51