作文

バックナンバー

[先月] [目次] [来月] [最新版] [トップ]

第101回   仲直り

今年の1月、私は自転車を失くした。
その自転車を買ったお店は近所の小さいお店で
おじさんが一人で毎日真っ黒になって自転車を修理している。
朝、屋上で朝ごはんを食べていると
おじさんが店を開ける様子が見える。
通りかかった時に挨拶すると
びっくりした顔をして、「誰かと思ったやんか」と笑うのだった。
自転車の調子が悪くなるとすぐに見てもらいに行った。
「きれいに使ってくれてるな」と言われるのが嬉しかった。


自転車を失くした時
私は自分のできる範囲内で、可能な限り探したかった。
それで『販売証明書』というものを書いてもらうために
店に行った。
おじさんが用意してくれてる時、
私は売りものの自転車を見て
「買った方がいいんかなあ」とも思った。
おじさんも売れた方がいいから、私に勧めた。
が、私はやはり探してみたかった。
「やっぱりもう少し探してみます」と言って歩いていく私の背中に、
おじさんは
「見つからへんて」
と言ったのだった。
それがなんだか寂しく響いたのを覚えている。
それで、それから前を通っても
挨拶するのを避けてしまうようになった。


結局自転車とは再会できなかったのだが
あちらこちらの自転車保管所を探し回った時間は
納得いくまで冒険ができたような、充実の時間だった。
そして幸運なことに、友人から半永久的に自転車を借りれることになった。
ただ、この自転車の調子が悪くなった時を想像すると
あの「見つからへんて」が響いて
おじさんの店に行きにくいなあ、と思っていた。
しかしついに、タイヤの空気が抜けてしまったので
店に行って空気を入れさせてもらうことにした。
久しぶりに寄るおじさんの店。
ここで買った自転車ではないので
40円払うのである。
「自転車もらったんです」と言ったら、
おじさんは「そら良かったな」と決まり悪そうな感じで言った。


しかし次の日もまた空気が抜けていたので
また見てもらいに行き、
パンクしていたことが分かった。
おじさんは、以前と同じように奥の椅子に座っておくように言い
修理を始めた。
おじさんの真っ黒な手、奥にある小さいテレビ、天井から吊ってあるタイヤ。
天気は良く、店の中は居心地が良かった。
タイヤが直って700円払うと
おじさんはレジから40円出してきて私に手渡し、
「パンクやったら空気入れても無理やった」
と言って、笑ったのだった。


おじさんはさわやかな笑顔だった、
それで私もさわやかな気持ちになった。
おじさんと仲直りだ!と直った自転車を思い切り漕いだ。
空は気持ちの良い、秋晴れだった。




第102回   竹内仁美さんのこと

この一週間、風邪引いてました。
ついこないだ、今年の冬の目標は風邪を引かないこと、
と言ってた私がです。
そしてその風邪の原因が馬鹿の極みで
くよくよ、いじいじ、悩んでたら
心が冷え切って、そこに
ウイルスがつけこんだのだ!
馬鹿じゃなかろうか。
病は気から、という例を自ら体現してどうする私。
今日は職場でしつこい汚れ物を
これでもかという位洗濯して
汚れとともに、風邪菌も旅立って行かれたようです。
風邪菌よ、私の馬鹿さ加減を指摘してくれて
ありがとよ。

しかしそんな中、ライブがありまして
竹内仁美さんと言う方の
CD発売記念ライブに呼んで頂いたのでした。
会場のラグに着いたら
竹内さんとメンバーの方のリハ中で、
その音楽で体があったまってしまい(これはホント!)、
体が一時的にもとに戻って、自分の出番も
奇跡的に無事歌えたのでした。
竹内仁美さんのCDは本当に素晴らしくて、

『LOVE LIFE FOREVER』
VINE RECORDS (VRD-391801)
         \2,100

って言うんですが、
この文章を読んじゃった方は
竹内さんをご存知ない方でも
クオレの陽子にだまされた!!と思って
買っていただきたいのです!
この方、HPも持ってらっしゃらなくて、
レコーディングのために1年半もライブお休みしてて、
ライブではピアノ弾き語りですが
録音はシンセサイザーも初めてなのに
ほとんどのオケをご自分で作られて、
それがなんとも素晴らしくて、
そしてなんと言っても!!
詩が素晴らしいんです。
歌詞カードが既に詩集、という
私のもっとも憧れる作品です。
音は、矢野顕子のCDのキャッチコピーにあった
「流しっぱなしで気持ちいい。
じっくり聴くとスゴイ」
を、そのまま捧げます。
私もいつの日か、
あんなふうに目の前の窓をふうわりと開けるような
暖かい日差しのような音楽を紡ぎだしたいなあ
と、ただただ祈るばかりです。
私みたいに、本番前にバタバタお化粧したりしないし
衣装も、カーテンの生地で自分で縫っちゃった〜
だって買うと高いんだもん、
とあっさりした紅い上着を着てて
もう、内側から輝いてるから
飾らなくてもほんと綺麗なんです。
そんな、ひとこまひとこまを脳裏に焼き付けて
お礼に、本番前に自慢の指圧をしてさし上げました。
ああ嬉しかった。
まず私は馬鹿を直すとこからやな。ヨシ。




















第103回   わかったぞ!

日に5、6回もうがいと手洗いをしたのに風邪を引いたので
効き目ないじゃん!と思って
もう私はうがいをしないのか?と思ったが
やはり同じようにしているのである。
でも今までとは何かが違っている。
前は、「これで私は風邪をひかないぞ!きゃはは〜」
という、はしゃいだ気分が混じっていたが
今はそんな気分はなく、ただの静かな平常心なのである。
多分前者は、うがいと手洗いに頼っていて、
後者は、うがいと手洗いを信じているのである。
頼っているのと信じているのは
似ているようで決定的に違う。
そんなふうに確認したら
私が信じている人たちのことを思い出して
幸せな気持ちになりました。





[先月] [目次] [来月] [最新版] [トップ]

your@mail.address
Akiary v.0.51